利得はほどほどだが、追尾装置を必要としない衛星通信用アンテナとしてQFHアンテナがある。ナガラ電子[1]のものを購入して学生実験の一テーマとして衛星からの電波受信実験を行なったが、見事にCWが受信できる。インターネットを調べてもかなり色々な設計データが得られる[2]。OpenMoM[3]を使ってシミュレーションをしてみようと思って、一応の成果が出たのでここにメモ書きとして残す。
(経緯:4ヶ月後に重い腰を上げてアンテナを自宅屋根上に設置したら、シミュレーションのやり方を忘れていた。)
QFHアンテナは2組のねじれたループが組み合わさった構造になっている。ねじれたループの2つに上から給電すると円偏波でドーム状のアンテナパターンが得られる。この構造で最大5dBi強の利得が取れるようだ。
このねじれをopenMoMのGUIソフトだけで再現するのは難しいので、PythonでパラメータファイルからopenMoMモデルを作るコードを書いた。ねじれの角度は色々なパターンが取れるが、半周捻ったものが一般的なようなので、今回はそれで固定している。コードは綺麗ではないがそこはご愛嬌ということで。
https://github.com/J-ROCKET-BOY/QFH-antenna-OpenMoM-simulation
(2021年9月1日 結構なバグがあったので、アップデート 詳細は次のブログ記事で)
https://rocket-live.blogspot.com/2021/09/qfhqfh.html
pythonが動く環境で "python QFHgenerator.py parameter.csv"などと実行すればcsvファイルに格納されたパラメータでopenMoMのモデルが生成する。ommRun.batを実行すると、生成されたモデルファイルのシミュレーションを実行する。(ommRun.batはこちらのシミュレーション環境に合わせて構築しているので、適宜修正して実行のこと)
各パラメータの意味は次の通り
File Name: モデルのファイル名、格納されるフォルダ名
BaseModel: 元となるモデル。周波数範囲などの物体形状以外のシミュレーションパラメータはこのモデルファイルを引き継ぐ
d[m]: エレメントの太さ
Dl[m], Ds[m]: ヘリカルの直径(Dl:大きい方、Ds: 小さい方)
Hl[m], Hs[m]: ヘリカルの高さ(Hl: 大きい方、Hs: 小さい方)
Ht[m]: 地上高(上エレメントの高さ)
Div: ヘリカル部の分割数(36なら180/36 = 5度ずつに分割)
parameter.csvに記載しているパラメータはアマチュアUHF帯に最適化したパラメータのみを残している。
最終設計のパラメータは、John Coppens ON6JC/LW3HAZ氏の計算サイト[2]の設計を元に、436.5MHz(アマチュアUHFの衛星割り当ての真ん中)で交差偏波成分が最も減るように全体のサイズを調整したものである。
9月1日追記:コードが間違っていたので放射パターンが多少変わって、最適とは言えなくなりました。ただし、それほど悪い設計ではないようです。
結果としては、アマチュアUHF帯全域で5.0~5.1dBi程度の最大利得で仰角50度付近にある。整合はアマチュアUHF帯全域で反射損失が-11.9dB以下、VSWRで1.7以下となった。整合に関してはもう少し調整の余地があるかもしれない。
【おまけ】
実際に作って屋根にあげてみた。ねじれ方向は逆なので、右旋回の円偏波になっている。
(9月1日追記:ねじれ方向はモデルと同じです。)
BIRDS-3[4]からのCWやGMSK信号がよく見えている。思ったよりGMSKのパケットのSN比が良いのでもしかしたら高仰角ならデコードができるかもしれない。
【参考文献】
[1] CQオーム、「ナガラ電子QFH435(QFH-435) 430MHzQFHアンテナ 低軌道衛星通信用」、https://www.cqcqde.com/fs/cqohm/16078
[2] John Coppens ON6JC/LW3HAZ, "Quadrifilar helicoidal", http://jcoppens.com/ant/qfh/calc.en.php
[3] 株式会社EEM、「OpenMoM - オープンソースモーメント法シミュレーター」、http://www.e-em.co.jp/OpenMOM/
[4] BIRDS-3 project, "Amateur Radio Operators", https://birds3.birds-project.com/outreach/document/
[5] 大賀明夫、「モーメント法の基礎とOpenMoM入門」RFワールド No.39、pp14-51、CQ出版2017年、https://www.rf-world.jp/bn/RFW39/RFW39A.shtml
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